感覚の基本

自閉症の聴覚過敏:デシベルが教えてくれること

大人にとっては普通の給食の時間のにぎやかさが、お子さんには耐えがたいことがあります。デシベルを知ると、その理由が見え、一日のいちばんうるさい時間に備えやすくなります。

文:Daily Sensory編集チーム · · 約6分で読めます

聴覚過敏は、自閉症によく見られる感覚の違いのひとつです。そして、それを理解するのに役立つのがデシベルです。自閉症の子の多くは、周りの人がほとんど気にしない音でも、痛い、気が散る、ぐったり疲れると感じることがあります。身近な場所がおおよそどのくらいうるさいのか、数値が何を意味するのかを知っておくと、一日のなかでいちばんつらい時間を見つけ、より良いサポートを考えやすくなります。

聴覚過敏を理解するためのデシベルの基本

デシベル(dB)は、音の大きさを表す単位です。ものさしの目盛りとは違い、対数で表す尺度なので、1段上がるごとに音のエネルギーはずっと大きく増えます。

  • おおよそ10dB上がると、人の耳にはだいたい2倍の大きさに聞こえます。
  • 3dB上がると音のエネルギーは約2倍になりますが、聞こえ方はそれほど大きく変わらないこともあります。

つまり、80dBの部屋は70dBの部屋より「少しうるさい」のではなく、約2倍うるさく聞こえます。音に敏感な子にとっては、その差が「なんとか耐えられる」と「過負荷」の分かれ目になることがあります。

dBA(dB(A))という表記を見かけることもあります。「A」は、とても低い音や高い音に鈍いという人の耳の聞こえ方に合わせて補正した測定値であることを示します。多くの騒音計やスマートフォンのアプリはdBAで表示します。

身近な場所の音の大きさの目安

下の数値は、よく使われるおおよその目安です。実際の大きさは、距離、部屋の広さ、硬い床や壁の有無、話している人数などによって大きく変わります。

音・場所おおよその大きさ
ささやき声約30dB
静かな図書館・寝室約30〜40dB
ふつうの会話約60dB
掃除機約70〜75dB
混雑した飲食店・にぎやかな給食の時間約70〜85dB
交通量の多い幹線道路沿い約80〜85dB
エンジン式の芝刈り機・草刈り機約90dB
ライブ会場、花火、間近のサイレン100dB以上

給食の時間、体育館、屋内プール、パーティーなど、子どもが過ごす身近な場所の多くが、この表のうるさい側にあることに気づくでしょう。硬い床や壁は音を反響させ、さらにうるさくします。

聴覚の安全:85dBAという目安

「85」という数字をよく耳にするかもしれません。これは職場での聴覚保護から来ています。米国国立労働安全衛生研究所(NIOSH)は、働く人の騒音ばく露を8時間の平均で85dBA未満に抑えるよう推奨しています。NIOSHは3dBの「交換率」も用いており、3dB大きくなるごとに、安全とされる時間は半分になります。

この数字については、いくつか注意点があります。

  • これは職場で働く大人向けの労働衛生上の指針です。子どもや、快適さを想定したものではありません。
  • 長期的な聴力の損傷を防ぐための数字で、その音が心地よいかどうかについては何も示していません。
  • 参考になる目安であって、お子さんにとっての医学的な上限ではありません。お子さんの聞こえについて気になることがあれば、小児科医や耳鼻咽喉科医に相談してください。

聴覚過敏は、害のないレベルの音から始まる

保護者の方にいちばん知っておいてほしいのはここです。音は、危険なレベルでなくても十分につらいものになります。自閉症の子の多くは、85dBAよりずっと低いレベルで苦しさを感じます。にぎやかな部屋でのふつうの会話、冷蔵庫のうなり、時計の秒針の音さえ、強烈に感じられることがあります。

音をさらにつらくする要因には、次のようなものがあります。

  • 予測できないこと。ハンドドライヤー、警報音、犬の鳴き声などの突然の音は、同じ大きさの一定の音よりずっとつらく感じられることがあります。
  • 音の高さ。甲高い音や、ブーンという振動音が特に苦手な子は多くいます。
  • たくさんの音が同時に鳴ること。騒がしい部屋でひとりの声を聞き分けるには、大きな労力が必要です。
  • 負荷の合計。疲れ、空腹、明るい光、人混みはすべて、音をさらにつらく感じさせます。こうした要因がどう積み重なるかは、感覚過敏と感覚過負荷のサイン・原因の記事で説明しています。

大人には平気に思える場所でお子さんが耳をふさいでいたら、その感覚を信じてあげてください。その子にとって、その音のつらさは本物です。

うるさい場所での実践的な工夫

イヤーマフとノイズキャンセリングヘッドホン

自閉症の子の多くが、給食の時間、全校集会、お店などのうるさい場所で、イヤーマフやノイズキャンセリングヘッドホンをとても役立てています。まずは家で練習して、慣れておきましょう。一日中ではなく、特にうるさい場面に絞って使うことをすすめる専門家もいるので、お子さんに合った使い方を作業療法士や耳鼻咽喉科医に相談してみるとよいでしょう。

静かな場所

回復できる場所を用意しておきましょう。家なら、クッションとやわらかい明かりのあるコーナー。学校なら、静かな部屋や落ち着いた場所で給食を食べられないか相談します。外出先では、車の中、トイレ、静かな片隅などが、気持ちをリセットする場所になります。

うるさいピークを避けて計画する

  • 買い物や外食、お出かけは、空いている時間帯を選びましょう。
  • スピーカー、厨房、出入口から離れた席を選びましょう。
  • ハンドドライヤーや避難訓練のベルなど、大きな音がわかっているときは事前に伝えましょう。
  • 過負荷になってからではなく、なる前に切り上げましょう。短くてもうまくいった経験が自信につながります。

作業療法士と連携する

作業療法士は、お子さんの音への敏感さを理解し、落ち着くための方法や休憩、学校や家での環境調整を含めた作戦づくりを手伝ってくれます。

お子さんの一日の音を測る

スマートフォンを使えば、その場所がどのくらいうるさいかの大まかな目安がわかります。スマートフォンのマイクによる数値は推定値で、専門の測定器ほど正確ではありませんが、場所や時間を比べるには十分です。いちばんつらそうな場所、たとえば給食の時間の教室、体育館、ラジオをつけた車内などで測ってみましょう。その数値を、お子さんの反応と並べて感覚日記に書き込めば、パターンが見えてきます。

よくある質問

自閉症の子にとって、何デシベルからがうるさすぎますか?

ひとつの決まった数字はありません。聴覚の安全については、8時間平均で85dBAという職場の目安がよく使われますが、自閉症の子の多くは、ふつうの会話程度のずっと低いレベルでもつらさを感じます。お子さんの反応をよく見て、作業療法士や耳鼻咽喉科医に個別のニーズを相談してください。

ノイズキャンセリングヘッドホンは自閉症の子に良いですか?

給食の時間、お店、イベントなどのうるさい場所で、とても役立つと感じている家庭はたくさんあります。まずは家で試してみましょう。特にうるさい場面に絞って使うことをすすめる専門家もいるので、どのくらい使うかは作業療法士や耳鼻咽喉科医に相談してください。

スマートフォンの騒音計アプリは正確ですか?

スマートフォンのマイクは専門の騒音計のように校正されていないため、アプリの数値は正確な測定値ではなく推定値です。それでも、場所や時間帯を比べたり、お子さんの一日でいちばんうるさい時間を見つけたりするには役立ちます。

聴覚過敏は難聴と同じですか?

いいえ。聴覚過敏は、音がどう感じられ、脳がどう処理するかに関わるものです。難聴は、音を聞き取る力が低下している状態です。聴力が正常でも、日常の音に圧倒されてしまう子はいます。聞こえについて気になることがあれば、小児科医に聴力検査について相談してください。

ご注意:この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、医師、作業療法士などの専門家による助言に代わるものではありません。Daily Sensoryは日々の観察を助けるツールであり、医療機器ではありません。

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