感覚の基本

自閉症の子のイヤーマフ・ノイズキャンセリングヘッドホン:選び方と使い方

合う1台があれば、行けなかった場所が行ける場所に変わることがあります。選び方、慣れさせ方、上手な使い方を紹介します。

文:Daily Sensory編集チーム · · 約7分で読めます

多くの自閉症の子にとって、日常の音はただうるさいだけではありません。痛い、気が散る、圧倒される、と感じることがあります。ハンドドライヤー、学校のチャイム、にぎやかな飲食店が、いい一日をつらい一日に変えてしまうこともあります。だからこそ、自閉症や聴覚過敏の子のためにイヤーマフやノイズキャンセリングヘッドホンを取り入れる家庭がたくさんあります。上手に使えば、お子さんが音の環境を自分でコントロールしやすくなり、ふだんならつらすぎる場所にも参加しやすくなります。この記事では、主な種類、選ぶときのポイント、慣れさせ方、そしてたくさんある道具のひとつとしての使い方を解説します。

イヤーマフやノイズキャンセリングヘッドホンが自閉症の子の助けになる理由

自閉症の人の多くは、音に敏感だったり、背景の音をふるいにかけるのが苦手だったりします。ある人にはにぎやかな程度の部屋が、別の人には音の壁のように感じられることがあります。突然の音には驚かされ、特定の高さの音は体が不快に感じることもあります。

イヤーマフやヘッドホンは、次のような点で役立ちます。

  • 音量を下げる。耳に届く音が減るので、神経への負荷が下がります。
  • 自分でコントロールできる感覚。自分のタイミングで着けられること自体が、安心につながります。
  • 行ける場所が増える。お店、全校集会、飲食店、花火大会などに参加しやすくなることがあります。
  • ニーズが伝わる。周りの人にも、今は静かにしてほしいのだと伝わります。

音がお子さんのつらさのよくある引き金なら、感覚過敏と感覚過負荷のサイン・原因の記事で全体像をつかむのに役立ちます。

イヤーマフ(パッシブ)とノイズキャンセリング(アクティブ)の違い

音を遮るヘッドホンをまとめて「ノイズキャンセリング」と呼ぶことがありますが、実際には大きく2種類あり、しくみが違います。

パッシブ(防音イヤーマフ)アクティブ・ノイズキャンセリング(ANC)
しくみ厚いクッションと密着性で、物理的に音を遮るマイクと電子回路で「逆位相の音」をつくり、一部の音を打ち消す
得意な音突然の大きな音を含む、幅広い音エンジン音、換気扇、うなりなど、一定の低い音
苦手な点かさばる、きつく感じることがある人の声や破裂音など、突然の音や高い音
電源不要充電や電池が必要
音楽などの再生たいていできないたいていできる
向いている場面全校集会、花火、ハンドドライヤー、運動会やスポーツ観戦車や電車での移動、飛行機、うなりのある部屋、落ち着く音楽を聴く

聴覚保護具として販売されている防音イヤーマフには、どのくらい音を遮るかの目安として、NRRやSNRといった遮音値が表示されていることがあります。アクティブ・ノイズキャンセリングのヘッドホンには通常こうした表示はないため、とてもうるさい場所での聴覚保護具として扱うべきではありません。うるさいイベントにはパッシブのイヤーマフ、移動や日常のうなりにはアクティブのヘッドホン、と両方を使い分けている家庭もあります。

自閉症の子のイヤーマフ・ノイズキャンセリングヘッドホンの選び方

いちばん良いのは、お子さんが実際に着けてくれるものです。機能の多さより、着け心地と感覚的な相性のほうが大切です。

  • サイズとフィット感。子どもの頭に合うように作られた、ヘッドバンドを調整できるものを選びましょう。ゆるいと音が入り、きついと痛くなります。
  • 重さ。軽いほうが長く着けやすくなります。
  • イヤーパッド。やわらかくなめらかで、耳全体を覆うもの。素材によっては嫌がる子もいるので、できれば試させてあげましょう。
  • 圧迫感。アクティブ型の一部で感じる耳の圧迫感を嫌がる子もいれば、心地よく感じる子もいます。
  • 音量制限。音楽などを再生できるなら、お子さんの耳を守るために音量を制限できるモデルを選びましょう。
  • 丈夫さ。落とされたり、踏まれたり、ランドセルに押し込まれたりするものです。
  • 見た目。鮮やかな色が大好きな子もいれば、目立たないシンプルなものを好む子もいます。本人に選んでもらいましょう。
  • バッテリーの持ち。アクティブ型は、学校の一日や移動の間、充電が持つか確認しましょう。

合うものが見つかるまで何度か試すこともあるので、できれば返品しやすいお店で購入するとよいでしょう。

イヤーマフやヘッドホンに慣れさせる方法

すぐに気に入る子もいれば、頭に何かを着ける感覚に最初は違和感を覚える子もいます。ゆっくり、楽しい雰囲気で進めましょう。

  1. 自由に触らせる。家に出しておいて、触ったり、着けたり外したりできるようにします。
  2. 落ち着いているときに始める。すでに圧倒されているときではなく、楽しいことをしている間に数分試してみます。
  3. 実際の音で練習する。掃除機やミキサーを動かして、着けたときと外したときの違いを感じてもらいます。
  4. 置き場所を決める。「いつもランドセルに入れる」「車に置いておく」など、決まった場所をつくります。
  5. 合図を教える。ほしいときに伝えられるよう、言葉、ジェスチャー、カードなどの合図を決めます。
  6. 学校に伝える。お子さんが着けてよいこと、どこに置いてあるかを先生に知っておいてもらいましょう。

上手な使い方

場所に合わせて使う

イヤーマフやヘッドホンがいちばん役立つのは、うるさいとわかっている場所です。全校集会、給食の時間、お店、運動会やスポーツ観戦、花火、美容院、洗車場、ハンドドライヤーのある公衆トイレなど。給食の時間がつらいお子さんには、給食の時間がつらい自閉症の子の記事で、組み合わせて使えるアイデアを紹介しています。

唯一の道具ではなく、道具のひとつとして

多くの作業療法士は、聴覚を守るグッズは一日中ではなく、うるさい場面で使うことをすすめています。落ち着いた場所では日常の音を聞くことにも意味があり、人の話を聞いて参加したり学んだりするためにも、声が聞こえる必要があります。イヤーマフは、静かな休憩、落ち着いた席、混みすぎる前にその場を離れることなど、ほかのサポートと組み合わせたときにいちばん効果を発揮します。お子さんに合ったバランスについては、担当の作業療法士に相談してみましょう。

安全に使う

  • 道路や水辺の近くでは、車の音や大人の指示など、大切な音が聞こえるようにしましょう。
  • 音楽などを再生する場合は、音量を低めにし、音量制限を使いましょう。
  • イヤーパッドは定期的に清潔にし、傷んだら交換しましょう。

日常の多くの音を痛がるように見える、聞こえについて気になることがある、といった場合は小児科医に相談してください。耳鼻咽喉科での聴力検査をすすめられることがあります。音に強く反応する子にとって、確認しておく価値のある検査です。

その背景にあるものに気づく

いつもよりイヤーマフを使いたがることが増えたら、それ自体がひとつのサインです。部屋がうるさくなったのかもしれませんし、お子さんが疲れていたり、ストレスを抱えていたりするのかもしれません。音の大きさの目安を知っておくと役立ちます。保護者のためのデシベルガイドでは、身近な音の大きさの意味を説明しています。常に見守るAIケアチームも、いつ、どこでうるさい場面があったのかを知る手助けになります。

よくある質問

イヤーマフやノイズキャンセリングヘッドホンは自閉症の子に良いですか?

うるさい場所でとても役立つと感じている自閉症の子はたくさんいます。耳に届く音の量を減らし、自分でコントロールできる感覚を与えてくれます。静かな休憩や落ち着いた場所など、ほかのサポートと組み合わせて、道具のひとつとして使うのがいちばん効果的です。いつ、どう使うかは作業療法士に相談できます。

一日中着けていても大丈夫ですか?

多くの作業療法士は、聴覚を守るグッズは一日中ではなく、うるさい場面で使うことをすすめています。落ち着いた場所では、日常の音や人の声も聞こえるようにするためです。子どもによって違うので、お子さんに合ったバランスを担当の作業療法士に相談してください。

防音イヤーマフとノイズキャンセリングヘッドホンの違いは何ですか?

防音イヤーマフはパッシブ型で、クッションと密着性で音を遮り、電源は不要です。アクティブ・ノイズキャンセリングヘッドホンは電子回路でエンジン音のような一定の低い音を打ち消し、たいてい音楽なども再生できます。とてもうるさいイベントにはイヤーマフ、移動にはアクティブ型、と使い分けている家庭も多くあります。

子どもの音への敏感さについて、医師に相談したほうがいいのはどんなときですか?

日常の多くの音を痛がる、音への反応が強くなってきている、聞こえについて気になることがある、といった場合は小児科医に相談してください。耳鼻咽喉科での聴力検査をすすめられることがあります。

ご注意:この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、医師、作業療法士などの専門家による助言に代わるものではありません。Daily Sensoryは日々の観察を助けるツールであり、医療機器ではありません。

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