自閉症の子の保護者に、学校生活でいちばんつらい時間はいつかと聞くと、同じ答えが返ってくることがあります。給食の時間です。給食の時間には、にぎやかな声、食器やトレーのぶつかる音、配膳の行列、食べ物のにおい、動き回るクラスメートが、一度に、予告なしに押し寄せます。自閉症や聴覚過敏の子にとって給食の時間の音はつらい組み合わせで、給食がうまくいかないと午後全体に響くことがよくあります。この記事では、給食の時間がなぜこれほど負担になるのか、お子さんがつらさを抱えているサイン、そして給食の時間を少しでも落ち着いたものにする工夫を紹介します。
給食の時間の音が自閉症の子にとってつらい理由
日本の多くの学校では給食を教室で食べますが、ランチルームや食堂を使う学校もあります。どちらも、硬い床や壁、机や椅子を動かす音、食器の音があり、音が吸収されずに反響しやすい環境です。30人以上の話し声が混ざり合って、ずっと続くざわめきになります。さらに、配膳の指示や「いただきます」の号令、放送が重なることもあります。
音に敏感な子にとって、そのざわめきはとても疲れるものです。自閉症の人の多くは、背景の音をふるいにかけるのが苦手なので、すべての音が一度に耳に入り、隣の友だちの声を聞き分けるのにも苦労します。しかも、音だけが問題なのではありません。
- 混雑。配膳の列、ぶつかること、机を寄せ合った班の形。
- におい。いろいろな料理のにおいが、ひとつの部屋にこもります。
- 光。明るい天井の照明、多くは蛍光灯です。
- 人とのやりとり。班での会話、誰と何を話すか、給食当番の役割。
- 時間のプレッシャー。短い給食時間と、「ごちそうさま」までに食べ終えなければという決まり。
- 予測できないこと。突然の歓声、食器を落とす音、おかわりじゃんけん、席替え。
その音の大きさが実際どのくらいなのかを知りたい方は、保護者のためのデシベルガイドで、身近な音の測り方や、にぎやかな場所がどのくらいうるさくなるかを説明しています。
給食の時間がつらすぎるサイン
子どもがいつも「給食の時間がつらい」と教えてくれるとは限りません。言葉にできないこともあれば、家に帰るまで我慢することを覚えてしまっていることもあります。次のようなパターンに注意してみましょう。
- 給食をほとんど食べずに残していると連絡がある(お弁当の日は、ほぼ手つかずで持ち帰る)。
- 下校直後に、お腹をすかせている、イライラしている、ぐったりしている。
- 先生から、午後の様子がつらそう、常同行動が増える、給食のあとに固まってしまう、と報告がある。
- 給食の時間に、保健室に行きたい、トイレに行きたいと言う。
- 耳をふさぐ、机の下に隠れる、その場から逃れるためにものすごく急いで食べる。
- お迎えのときや帰宅後に、パニックが起こりやすい。
放課後に爆発してしまうのは、一日中がんばって持ちこたえていた結果であることがよくあります。自閉症のパニックとかんしゃくの違いの記事では、ストレスがどう積み重なり、なぜ安心できる場所、つまり保護者のもとで爆発しやすいのかを説明しています。
給食を食べないことが続いている、食べる量が心配、という場合は、学校だけでなく小児科医にも相談してください。
給食の時間のにぎやかさを和らげる工夫
どの子にも効く万能の方法はありません。いくつかを1つか2つずつ試して、何が効果的かを見てみましょう。
お子さん自身が使える工夫
- 聴覚を守るグッズ。イヤーマフや、ノイズを減らすヘッドホンで、ざわめきをやわらげられます。まずは家で練習して慣れておきましょう。
- 決まった席。毎日同じ席、できれば班の端や壁際、配膳台やごみ箱から離れた場所が理想です。
- 量の調整。苦手な食べ物や量について無理をさせないよう先生と相談しておくと、限られた時間の中で安心して食べやすくなります。お弁当の日は、食べ慣れた、開けやすいものを。
- つらくなったときの合図。説明しなくても静かな場所に移れる、休憩カードや合図を決めておきます。
学校に相談できること
- 配膳の混雑を避ける。配膳の列に並ばずにすむようにする、先に席について待てるようにするなど、にぎやかになる前に落ち着けるようにします。
- 静かな場所で食べる。別室(相談室、通級指導教室、特別支援学級の教室など)で、一人またはごく少人数で食べる。
- 少人数で食べる。先生の見守りのもと、落ち着いた部屋で少人数で食べる機会をつくる。
- 席の配慮。教室の中でも、比較的静かな窓際や端の席にする。
- 食後に体を動かす。食べ終わったら、外に出たり体を動かす休憩をとったりしてよいことにする。
お子さんの心の準備を手伝う
給食の時間の流れを、ひとつずつ話しておきましょう。手を洗う、配膳を待つ、「いただきます」、食べる、片づける、昼休み、のような簡単な絵カードの手順表が合う子もいます。可能なら、人のいない時間に教室やランチルームを見学させてもらい、にぎやかになる前の部屋を知っておくのもよい方法です。
学校と連携する
多くの学校も、給食の時間がうまくいってほしいと願っています。いちばん良い結果につながりやすいのは、担任の先生、特別支援教育コーディネーター、スクールカウンセラーなどと、落ち着いて具体的に話し合うことです。日本では、障害のある子どもへの「合理的配慮」の提供が学校に求められており、話し合いはその枠組みの中で進めることができます。
- 具体例を持っていく。家での様子、先生からの報告、お子さんが話したことのメモ。「給食がつらい」より、具体的な内容のほうが役立ちます。
- 学校で見えていることを聞く。どこに座っているか、食べているかなど、先生だからこそ気づけることがあります。
- 選択肢を1つか2つ提案する。たとえば「配膳の列に並ばずに、端の席で待つ」「週2回は別室の少人数で食べる」など。
- お試し期間を決める。数週間試して、どうだったかを一緒に振り返ります。
- 書面に残す。「個別の教育支援計画」や「個別の指導計画」がある場合は、給食の時間の配慮を加えられないか相談してみましょう。手続きや扱いは自治体や学校によって異なるので、学校や教育委員会に確認してください。この記事は一般的な情報であり、法的な助言ではありません。
作業療法士は、ここで心強い味方になります。感覚面のサポートを提案し、お子さんのニーズを学校に伝わる言葉で説明してくれます。わかりやすい記録があると、こうした話し合いも進めやすくなります。療育の先生と成長を共有する方法の記事では、1週間をシンプルにまとめる方法を紹介しています。
シンプルな給食プランのテンプレート
この表を使って、お子さんや学校とプランを決めましょう。みんなが覚えていられるよう、短くまとめるのがコツです。
| 給食の時間の流れ | 試すこと | 手伝う人 |
|---|---|---|
| 準備 | 配膳の列に並ばず、先に席で待つ | 担任の先生 |
| 席 | 毎日同じ、壁際の班の端の席 | 担任の先生 |
| 音 | イヤーマフをランドセルに入れておき、使ってよい | 本人、担任の先生 |
| 食事 | 量や苦手なものを事前に調整してよい | 保護者、担任の先生 |
| つらくなったら | 休憩カードを見せて、相談室へ移動 | 本人、支援員 |
| 食後 | 外で5分間体を動かす | 担任の先生、支援員 |
| 振り返り | 3週間後に見直す | 保護者、担任の先生 |
お子さんにも、言葉、グッド・バッドのサイン、色のスケールなどで、どうだったかを聞いてみましょう。本人の意見は大切です。時間がたつにつれ、調子のいい日は教室で過ごせる時間が増え、つらい日はもっとサポートが必要、ということがわかってくるかもしれません。それは自然なことで、柔軟なプランなら両方に対応できます。
保護者が給食の時間の様子を自分の目で見られることは、ほとんどありません。見えない時間を補うために、常に見守るAIケアチームを使う家庭があるのも、そのためです。
よくある質問
自閉症の子が、教室以外の場所で給食を食べることはできますか?
相談室や通級指導教室などの別室、少人数で食べる機会など、より静かな選択肢を用意できる学校は少なくありません。学校の状況やお子さんのニーズによって異なります。担任の先生や特別支援教育コーディネーターに相談し、個別の教育支援計画がある場合は、給食の時間の配慮をどう盛り込めるか、学校や教育委員会に確認してください。
給食の時間にイヤーマフを使わせたほうがいいですか?
イヤーマフやノイズを減らすヘッドホンは、うるさい場所で多くの子の助けになっています。まずは家で練習し、学校には使ってよいことを伝えておきましょう。イヤーマフだけに頼らないよう、静かな席など他のサポートと組み合わせるのがおすすめです。
子どもが学校で給食をほとんど食べません。どうすればいいですか?
まず、その理由を探ってみましょう。音、におい、時間の短さ、食べ物そのものなど、さまざまな可能性があります。学校で見えていることを先生と話し合い、食べる量が心配な場合は小児科医にも相談してください。
午後のパニックの原因が給食の時間かどうか、どうすればわかりますか?
数週間かけてパターンを探しましょう。給食の時間の様子、先生からの報告、下校後の様子を短く記録します。つらい午後が、うるさい、またはストレスの多い給食の時間と重なっているなら、学校や療育の先生に伝える価値のある手がかりです。
ご注意:この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、医師、作業療法士などの専門家による助言に代わるものではありません。Daily Sensoryは日々の観察を助けるツールであり、医療機器ではありません。